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(9) 中国山地エメラルド・プロジェクト

鳥取県、島根県、岡山県、広島県の県境を接する地域は、平成5年にこの地域の市町村長の呼びかけにより、中国山地県境市町村連絡会議(通称:県境サミット)を設立し、構成市町村からの負担金で「エメラルド・シティ・プロジェクト」と呼ばれる共同ソフト事業を展開している。

この地域は、かつて「たたら製鉄」「和牛」「製炭」という3つの共通産業を軸に、婚姻や商工業等の交流を通して栄えてきた地域であった。ところが、これらの産業の衰退と共に交流が途絶えがちとなり、現在では共に過疎・高齢化の問題に直面している。そこで、地域の産業振興を図る目的で設立されたのが、県境サミットである。1993年8月の設立以来、県境サミットの人材育成を目的に「新見女子短大」を設立し、年数回大型フォーラムを行い、圏域施設共同カードの発行や国際交流、先行地域の事例調査等を精力的に行ってきた。

県境サミットではパソコン通信「エメラルド・ネット」も開局し、400名の会員には毎日圏域の情報が発信されている。また、構成市町村のホームページとリンクする県境サミットのホームページも作成された。しかし、この地域ではISDN回線が引かれておらず、携帯電話やポケットベルも使えず、情報サービスのアクセスポイントの絶対数がまだ少ないため、事務局では世の中の情報化が新たな過疎を生むことを危倶し、県境サミットで独自に携帯電話のアンテナを立てる等、情報化に取り組もうとしている。

かつてこの地域は、地域相互の情報が活発に往来する情報の十字路であった。現在は中央の情報が県境地域まで伝わる間に毛細血管化し、ともすれば途絶えがちになると事務局は指摘する。根本的には経済活動や商業活動を活発にすることであるが、行政も行政交流や住民交流を企画し、県境を接する地域では自治体ごとにちがうシステムでも相互交流できるような仕組みをつくろうと計画している。ネックとなるのはコストで、過大な投資をしてすぐに陳腐化することのないよう、既存のシステムを生かしながら技術革新の動向も視野に入れ、レベルアップを図っていく予定である。当面既存CATVを広域化し、福祉情報に活用する。

県境地域の情報化は、県境で滞っていた情報を相互に交流させ、境を接する二つの地域を一つの情報で結ぶものと期待される。

 

 

 

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